
ブランドよりも育成の時代へ
スポンサーリンク
昭和~平成~令和と時代が移り変わり、プロ野球の様相も一昔前とは随分変わってきたように感じます。昭和の頃は間違いなく「巨人一辺倒のセ・リーグ至上主義」と言えました。あくまで巨人を中心に他のプロ野球チームが廻る構図ですよね。それが平成に入り、徐々にですが「地殻変動が起こる」かの如く潮の目が変わってきたのです。
大きなきっかけは2004年に起こった球界再編と言えるでしょう。
もちろん、それ以前からパ・リーグを中心に様々な動きはありました。どうしても「巨人の恩恵」を受けられなかったパ・リーグは人気面で(セ・リーグより)大きく劣り、毎年苦難の連続だったからです。
そこでパ・リーグ各球団はサッカーのJリーグをヒントにフランチャイズの地方分散化に着手。
1988年には首都圏(3球団)と関西圏(3球団)の都市部にしか集中してなかった(パ・リーグの)本拠地は、現在「北海道・東北・九州」に3球団が移転し、残るチームも(1球団を除き)比較的都市部を離れた場所で構える様になりました。
そして「セ・パ交流戦」の導入で少なからずも「巨人の恩恵」を受けられる様になってきたのです。
さらに決定的な変化は「メディアの形態」です。
巨人人気の源と呼べる「地上波放送のゴールデンタイム中継」が殆ど姿を消し、ケーブテレビや衛星放送、さらにはネットでの配信という形に(中継が)シフトした事で「巨人の一極集中」が劇的に崩れたのです。
球界再編に地方へのフランチャイズ化、そしてネットを代表する様にコンテンツの変化が時代と共に訪れプロ野球の流れを大きく変えたわけです。
かって「お荷物球団」と呼ばれたパ・リーグのチームが年間収支で黒字を計上するまでになり、今やプロ野球チームをブランドで(人気を)計る時代は終焉を迎えました。
これが「プロ野球の門」を叩こうとするプロ志望選手になれば更に顕著になります。
今も皆無ではありませんが「セ・リーグ志望」「在京のセ・リーグ志望」という声は殆ど(志望者から)聞かれなくまりました。
もちろん「ドラフト会議で指名」されないとプロ野球の門はくぐれませんし、指名されても入団拒否をすれば結局回り道になりますから(指名を受けた球団に)基本的には入団します。以前の様な「逆指名制度」の様に志望者側から選べるシステムも無くなりました。
それでも今は「人気(ブランド)より自分自身を育ててくれる」チームに魅力を持つ志望者が増えているそうです。あくまで努力した者が残る弱肉強食の世界ではあるのですが、どれだけ自分自身の能力を引き出してくれるのか?を一つのバロメーターとして捉える時代へと推移してきたように思うのです。
育て上手な球団は?
スポンサーリンク
プロ野球の門を叩いたからには「活躍する」事が前提ですし、如何に「自分の力を引き出してくれるか?」という環境が揃っているかを考えます。もちろん激しい競争社会ですから、活躍するのも(自分自身の)努力次第である事は間違いありません。しかし「努力に報いてくれる」体制を敷いてる球団であるかをチェックしてみる必要があるでしょうね。
プロ野球はドラフト会議で選択希望選手を獲得し、育てる事が基本的な強化です。それに足らない部分やより強化する為にFA(フリーエージェント)や外国人選手を補強するのです。或いは選手間のトレード(最近は少なくなりましたが)という方法を取ります。
集客力が高く、親会社の予算も強靭であれば「FAや外国人選手」というハイコストの手段を用いて補強に繋げますが、基本的には「ドラフト」で獲得した生え抜き選手を育てる事が王道なのです。
では、どのチームが最も「王道を成功」に導いているのでしょうか?
球団別ドラフト選手を検証してみる
2008年~2017年の過去10年に指名された選手を対象にデータを集めました。
下記それぞれの項目で12球団を比べてみました。
※一軍活躍選手数
①阪神タイガース 20人
②広島東洋カープ 18人
③千葉ロッテマリーンズ 18人
④オリックスバファローズ 18人
⑤埼玉西武ライオンズ 17人
⑥読売ジャイアンツ 15人
➆中日ドラゴンズ 14人
⑧福岡ソフトバンクホークス 13人
➈北海道日本ハムファイターズ 13人
⑩横浜DeNAベイスターズ 12人
⑪東北楽天イーグルス 11人
⑫東京ヤクルトスワローズ 10人
※主力成長選手数
①広島東洋カープ 13人
②福岡ソフトバンクホークス 11人
③埼玉西武ライオンズ 11人
④千葉ロッテマリーンズ 11人
⑤オリックスバファローズ 11人
⑥横浜DeNAベイスターズ 10人
➆阪神タイガース 8人
⑧中日ドラゴンズ 8人
➈読売ジャイアンツ 7人
⑩北海道日本ハムファイターズ 7人
⑪東北楽天イーグルス 6人
⑫東京ヤクルトスワローズ 5人
※上記でドラフト3位以下及び育成枠出身の選手数
①広島東洋カープ 6人
②阪神タイガース 6人
③福岡ソフトバンクホークス 5人
④埼玉西武ライオンズ 4人
⑤千葉ロッテマリーンズ 4人
⑥オリックスバファローズ 4人
➆横浜DeNAベイスターズ 4人
⑧読売ジャイアンツ 3人
➈北海道日本ハムファイターズ 4人
⑩東北楽天イーグルス 3人
⑪東京ヤクルトスワローズ 3人
⑫中日ドラゴンズ 2人
以上「3項目」で過去10年におけるドラフト入団における①一軍昇格を果たしたか②主力選手になり得たかという「ドラフト成功度」に加え、即戦力が集中する(ドラフト)1位・2位指名以下の選手(育成枠を含む)を戦力化に成功した③スカウトの目利き度も集計してみました。あくまで主観で見聞した結果ですので多少の誤差はあると思いますが、12球団の10年間が一目瞭然で炙り出されたと言えるでしょうね。このベースを元に「どこの球団に眼力があり、育て上手か?」をまとめてみようと思います。
選手を育てるのが上手なチームは?
ドラフト上位で獲得する選手はある意味「活躍して当然の完成形」なので、高い確率で戦力として加わります。チームの構成を考え戦力分析を図った上での重要な作業なのですが、上手く当てはまる存在に育て上げなければ意味がありません。競争社会の激しい中においても、一人でも多く一軍の戦力に加える事が「強化に求められるミッション」と言えるでしょう。
それでは、どのチームがドラフト戦略で成功しているでしょうか?
※2009年~2018年の過去10年間における順位上位度
(1位6点・2位5点・3位4点・4位3点・5位2点・6位1点として加算し、CSは対象外)
①福岡ソフトバンクホークス 51点
②読売ジャイアンツ 49点
③北海道日本ハムファイターズ 42点
④埼玉西武ライオンズ 41点
⑤広島東洋カープ 38点
⑥阪神タイガース 36点
➆中日ドラゴンズ 35点
⑧東京ヤクルトスワローズ 32点
➈千葉ロッテマリーンズ 27点
⑩東北楽天イーグルス 26点
⑪オリックスバファローズ 24点
⑫横浜DeNAベイスターズ 20点
近年、最も安定した成績を収めてるのは「福岡ソフトバンクホークス」です。ドラフト戦略においてもキッチリと戦力に育て上げ、選手獲得の眼力(スカウティング)が際立っているのが反映されていますね。
「読売ジャイアンツ」は決してドラフト戦略で成功していると言えませんが、FAや外国人選手の補強でリカバリーしていると言えます。また即戦力の多い1位指名の選手が主力になってますよね。
「広島東洋カープ」は着実に成果を上げてるのが一目瞭然で分かります。安定したスカウティングと育成は他チームの模範となるのではないでしょうか?また「埼玉西武ライオンズ」「北海道日本ハムファイターズ」もスカウティングや育成の面で抜きん出たチームと言えます。
「横浜DeNAベイスターズ」は長期低迷期があり、データ上は全ての面で芳くありません。しかし、親会社が変わった2012年を境にドラフト戦略も育成に関しても効果が出始めており、これからの推移が楽しみと言えるでしょう。対照的なのは「中日ドラゴンズ」で、ここ5年程低迷が続いてますし、ドラフト戦略も芳しいとは言えません。熱狂的なファンが多いチームなので奮起が待たれるところです。
以上、いろんな角度からプロ野球の戦略や育成の成果を見て来ましたが、決して大金を個人に注ぎ込む事だけが全てではないのです。やはり戦力を上昇させるには「地道な活動を積み重ねていかないと成果が出ない」という実態を改めて知り得たというのが、今回集計を取って感じた事でした。とくに「ホークスやカープ」は健全なモデルケースとして称賛されるべきでしょうね。
(合わせてお読みください)
2020年は大不況?厳しい時代に巻き込まれない対策法を今から考える。
スポンサーリンク